
可愛らしい容姿と人懐っこい性格で人気の猫、アメリカンショートヘア。
実は、その美しい被毛には「ダブルコート」という秘密が隠されています。
この記事では、アメリカンショートヘアの飼い主さんや、これから迎えたいと考えている方が抱く、ダブルコートとか?という基本的な疑問から、短毛種なのに抜け毛は多いのか?という核心に迫る問いまで、詳しく解説します。
さらに、季節の変わり目に訪れる換毛期の特性や、効果的な抜け毛対策についても深掘りします。日々のブラッシング方法、シャンプーは必要?といったお手入れの疑問、そして見落としがちな皮毛の栄養不足が豊かな毛色に与える影響まで、愛猫と快適に暮らすための情報を網羅しました。
この記事を読めば、アメリカンショートヘアの被毛に関する全ての悩みが解決するでしょう。
アメリカンショートヘアのダブルコートの構造と特徴
- ダブルコートとか?その被毛の仕組み
- 短毛種なのに抜け毛が多い理由
- 実際のところ抜け毛は多いのか?
- 特に抜け毛が増える換毛期とは
- 70種類以上ある豊かな毛色
ダブルコートとか?その被毛の仕組み

アメリカンショートヘアの被毛について語る上で欠かせないのが、「ダブルコート」という言葉です。
これは、猫の被毛が2種類の毛からなる二重構造になっていることを指します。
具体的には、外側を覆う硬くてしっかりした毛質の「オーバーコート(上毛)」と、その下に密集して生えている柔らかくふわふわした「アンダーコート(下毛)」で構成されています。
オーバーコートは、外部の刺激や紫外線、水などから皮膚を守る鎧のような役割を果たします。
一方、アンダーコートは、主に体温を調節する断熱材のような役割を担っており、寒い時期には密度を増して保温性を高め、暑い時期には量を減らして通気性を良くします。
このように、アメリカンショートヘアが持つダブルコートは、様々な環境に適応するための高機能な被毛構造なのです。
豆知識:ワーキングキャットとしての名残
アメリカンショートヘアの祖先は、ネズミを捕る「ワーキングキャット」として活躍していました。
厳しい環境下で働くため、体を守り、体温を維持するダブルコートの被毛が発達したと言われています。
シングルコートとの違い
猫の被毛には、ダブルコートの他にアンダーコートがない「シングルコート」という種類も存在します。
それぞれの特徴を以下の表にまとめました。
ダブルコート | シングルコート | |
---|---|---|
構造 | オーバーコートとアンダーコートの二重構造 | オーバーコートのみの一重構造 |
主な役割 | 皮膚保護、保温・体温調節 | 皮膚保護 |
抜け毛 | 多い(特に換毛期) | 比較的少ない |
代表的な猫種 | アメリカンショートヘア、ノルウェージャンフォレストキャット、ペルシャなど | シャム、ロシアンブルー、シンガプーラなど |
この表からも分かるように、ダブルコートの猫はシングルコートの猫に比べて、抜け毛が多くなる傾向にあります。
これが、アメリカンショートヘアの抜け毛が多いと言われる大きな理由の一つです。
短毛種なのに抜け毛が多い理由

アメリカンショートヘアは「ショートヘア」という名前の通り短毛種に分類されます。
そのため、「長毛種に比べてお手入れが楽そう」「抜け毛も少ないだろう」と考える方も少なくありません。
しかし、実際にはアメリカンショートヘアの抜け毛は多いと感じる飼い主さんがほとんどです。
その最大の理由は、前述の通り、被毛がダブルコートであることに起因します。
ダブルコートの猫は、体温調節のためにアンダーコートの量を季節に応じて変化させます。
特に、不要になったアンダーコートがごっそりと抜け落ちる「換毛期」には、想像以上の量の毛が抜けることになります。
毛の長さは短いものの、1つの毛穴から10本以上のアンダーコートが生えているとも言われており、その密度が抜け毛の多さに直結しているのです。
また、アメリカンショートヘアは中型のセミコビータイプで、がっしりとした体格をしています。
体の表面積が広い分、抜け毛の総量も多く感じられる一因と言えるでしょう。
抜け毛が多い理由のまとめ
- 二重構造のダブルコートであること
- 保温性の高いアンダーコートが季節で生え変わること
- 被毛の密度が非常に高いこと
このように、短毛種という言葉のイメージとは裏腹に、アメリカンショートヘアは被毛の構造上、抜け毛が多くなりやすい猫種であることを理解しておく必要があります。
実際のところ抜け毛は多いのか?

アメリカンショートヘアとの暮らしを考えたとき、多くの方が気になるのが抜け毛の量でしょう。
結論から申し上げますと、「はい、アメリカンショートヘアの抜け毛は、短毛種の猫の中ではトップクラスに多い」といえます。
前述の通り、この猫種は「ダブルコート」と呼ばれる二重構造の被毛を持っています。
このため、同じ短毛種でもアンダーコートを持たないシングルコートの猫種(例えばロシアンブルーなど)と比較した場合、その差は歴然としています。
日常生活において、洋服やソファ、カーペットはもちろん、空気中にまでフワフワと毛が舞っているのを目にする機会が格段に多くなるでしょう。
ブラッシングをすれば、あっという間に手のひらに山盛りの毛が集まり、人によっては「テニスボール大の毛玉ができた」と表現するほどです。
この抜け毛の多さは、アメリカンショートヘアと暮らす上で避けては通れない、大きな特徴の一つなのです。
抜け毛が多いことによる注意点
抜け毛の多さは、いくつかの点で注意が必要です。
- 掃除の手間:部屋を清潔に保つためには、こまめな掃除が欠かせなくなります。
- アレルギー:猫アレルギーの原因は毛そのものではありませんが、毛に付着したフケや唾液中のアレルゲンが飛散しやすくなります。
- 毛球症のリスク:猫自身がグルーミングの際に飲み込む毛の量が増え、胃腸で毛玉が詰まる「毛球症」のリスクが高まります。
ただ、この一見するとデメリットに思える抜け毛の多さは、見方を変えれば「愛猫が健康であることの証」でもあります。
これは、被毛のサイクル(毛周期)が正常に機能し、古い毛が抜けて新しい健康な毛へと生まれ変わっている健全なサインなのです。
抜け毛は健康のバロメーター
むしろ注意すべきは、抜け毛の「異常な変化」です。
例えば、「一部分だけ毛がごっそり抜けている(脱毛症)」「フケが異常に多い」「体をかゆがっている」といった症状が見られる場合は、皮膚病やアレルギー、ストレスなどが原因かもしれません。
逆に、換毛期でもないのに急に抜け毛が増えたり、逆に極端に少なくなったりした場合も、何らかの体調不良のサインである可能性があります。
日々の抜け毛の量を知っておくことは、愛猫の健康状態をチェックする一つの大切な指標になるのです。
「アメショーは本当に毛が抜けますね。ブラッシングをすると、もう一匹猫が作れるんじゃないかと思うくらいです(笑)でも、それもこの子の魅力の一つと捉え、日々のコミュニケーションを楽しんでいます。」
このように、アメリカンショートヘアの抜け毛の多さは紛れもない事実です。
しかし、それはこの猫種が持つ豊かな被毛と健康の証左でもあります。
この特性を正しく理解し、日々のケアを通じて上手に向き合っていくことが、愛猫との快適な暮らしに繋がっていくでしょう。
特に抜け毛が増える換毛期とは

アメリカンショートヘアの抜け毛がピークに達するのが「換毛期」です。
換毛期とは、季節の変わり目に被毛が生え変わる時期のことで、一般的に春と秋の年に2回訪れます。
春の換毛期(3月~5月頃)
冬の寒さから体を守っていた、密度が高く保温性に優れた冬毛(アンダーコート)がごっそりと抜け落ち、通気性の良い夏毛へと生え変わります。
1年で最も抜け毛が多くなる時期であり、ブラッシングをすると驚くほどの量の毛が取れます。
秋の換毛期(9月~11月頃)
夏の間に活躍した粗めの夏毛が抜け、これから来る冬の寒さに備えて、保温性の高い冬毛が生えそろってきます。
春ほどではありませんが、この時期も抜け毛は増加します。
換毛期の注意点
この時期は、猫自身が毛づくろい(グルーミング)の際に大量の抜け毛を飲み込んでしまいがちです。
飲み込んだ毛が胃や腸で塊になってしまう「毛球症」を引き起こすリスクが高まるため、飼い主によるケアが特に重要になります。
前述の通り、エアコンの効いた室内で暮らす猫の場合、季節の変化を感じにくく、明確な換毛期がなく一年中毛が抜けることもあります。
愛猫の抜け毛の様子を日頃からよく観察し、量が増えてきたと感じたら、より丁寧なケアを心がけてあげましょう。
70種類以上ある豊かな毛色

アメリカンショートヘアといえば、シルバーの地色に黒い縞模様の「シルバータビー」を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は公認されているだけでも70種類以上の多彩な毛色や模様が存在する、非常にバリエーション豊かな猫種です。
抜け毛のお手入れはどの毛色でも共通ですが、毛色によって少し違った印象を楽しむことができます。
ここでは代表的な毛色をいくつかご紹介します。
代表的な毛色の種類
- シルバータビー: 最も有名で人気のあるカラー。シルバークラシックタビーとも呼ばれ、渦を巻いたような模様が特徴的です。
- ブラウンタビー: やや明るいブラウンの地に、濃い黒の縞模様が入ります。野性的な印象で、シルバータビーに次いで人気があります。
- レッドタビー: オレンジがかった明るい茶色の縞模様で、温かみのある優しい雰囲気が魅力です。近年人気が高まっています。
- クリームタビー: 淡いミルクティーのような色合いで、柔らかく可愛らしい印象を与えます。
- ブルー系: グレーがかった青色の被毛で、光沢があり上品な雰囲気です。タビー模様のほか、単色のソリッドカラーも存在します。
- ブラック系: 全身が真っ黒なブラックスモークや、白と黒のバイカラーなど、クールで神秘的な魅力があります。
- カメオタビー: 根元が白く、毛先に向かってレッド系の色が付いている美しいカラーリングです。
毛色や模様のバリエーションが豊富なことも、アメリカンショートヘアが世界中で愛されている理由の一つです。
これからお迎えを考えている方は、ぜひお気に入りのカラーを探してみてください。
アメリカンショートヘアのダブルコートのお手入れと対策
- 日常生活でできる抜け毛対策
- 健康な被毛を保つブラッシング
- 定期的なシャンプーは必要?
- 注意したい皮毛の栄養不足
- アメリカンショートヘアのダブルコートとの快適な暮らしまとめ
日常生活でできる抜け毛対策

アメリカンショートヘアの抜け毛と上手に付き合っていくためには、日々の生活の中での対策が非常に重要です。
ブラッシング以外にも、いくつかの工夫をすることで、部屋の中に舞う毛を減らし、飼い主さんと愛猫双方の快適性を高めることができます。
こまめな掃除を心がける
最も基本的で効果的な対策は、こまめな掃除です。
抜け毛は床、カーペット、ソファ、ベッドなど、あらゆる場所に付着します。
粘着カーペットクリーナー(コロコロ)や、ペットの毛に強い掃除機などを活用し、抜け毛が蓄積する前に除去することを習慣にしましょう。
空気清浄機を設置するのも、舞い上がる毛やフケをキャッチするのに役立ちます。
猫の寝床や布製品の工夫
猫がよく過ごすお気に入りの場所には、洗濯しやすいブランケットやタオルを敷いておくと良いでしょう。
抜け毛がそこに集中するため、布を交換したり洗濯したりするだけで、簡単にお手入れができます。
洋服に関しても、静電気が起きにくく、毛が付きにくい素材を選ぶとストレスが軽減されます。
抜け毛対策のポイント
- 掃除: 粘着クリーナーや掃除機でこまめに掃除する。
- 環境: 空気清浄機を導入して空中の毛を減らす。
- 布製品: 猫の寝床には洗いやすい布を敷く。
- 衣類: 毛が付きにくい素材の服を選ぶ。
これらの対策は、部屋を清潔に保つだけでなく、アレルギーの原因となるアレルゲンを減らす効果も期待できます。
少しの手間をかけることで、より快適なペットライフを送ることができます。
健康な被毛を保つブラッシング

アメリカンショートヘアの抜け毛対策において、最も重要で効果的なケアがブラッシングです。
定期的なブラッシングは、部屋に抜け毛が散らばるのを防ぐだけでなく、猫の健康維持にも多くのメリットをもたらします。
ブラッシングのメリット
- 抜け毛の除去: 死んだ毛や抜けそうな毛を事前に取り除き、毛の飛散を防ぎます。
- 毛球症の予防: グルーミングで飲み込む毛の量を減らし、胃腸への負担を軽減します。
- 血行促進: 皮膚を適度に刺激し、血行を良くして健康な被毛の成長を促します。
- 皮膚の健康チェック: 皮膚の異常や寄生虫などを早期に発見する機会になります。
- コミュニケーション: 愛猫との信頼関係を深める大切なスキンシップの時間になります。
ブラッシングの頻度と方法
ブラッシングの頻度は、普段は週に2〜3回、換毛期には毎日行うのが理想的です。
子猫の頃から慣れさせておくと、ブラッシングを気持ちの良いものとして受け入れてくれるようになります。
力を入れすぎず、毛の流れに沿って優しくとかしてあげましょう。
猫が嫌がる場合は無理強いせず、短い時間から始めて徐々に慣らしていくことが大切です。
ブラシには様々な種類がありますが、アメリカンショートヘアのような短毛のダブルコートには、皮膚を傷つけにくいラバーブラシや、アンダーコートを効率的に除去できるスリッカーブラシがおすすめです。
用途に合わせて使い分けると良いでしょう。
定期的なシャンプーは必要?

「抜け毛が多いなら、シャンプーで一気に洗い流した方が良いのでは?」と考える方もいるかもしれません。
確かに、シャンプーは抜け毛をごっそり取り除くのに効果的ですが、その必要性については慎重に判断する必要があります。
基本的に、猫は自分で体を舐めて清潔に保つ(グルーミング)習性があるため、頻繁なシャンプーは必要ありません。
むしろ、シャンプーのしすぎは、皮膚を守るために必要な皮脂まで洗い流してしまい、かえって皮膚の乾燥やトラブルを招く可能性があります。
シャンプーを行う目安としては、年に1〜2回程度、あるいは汚れやニオイが気になったときで十分です。
特に換毛期に抜け毛がひどい場合や、毛球症対策としてシャンプーを検討するのは良い選択肢といえます。
シャンプー時の注意点
シャンプーをする際は、必ず猫専用のシャンプーを使用してください。
人間用のものは刺激が強すぎます。また、シャンプー後はすすぎ残しがないようにしっかりと洗い流し、タオルドライとドライヤーで根本まで完全に乾かすことが重要です。
濡れたまま放置すると、雑菌が繁殖しやすくなります。
猫が水を極端に嫌がる場合は、無理にシャンプーをするのではなく、濡れタオルや市販のドライシャンプーシートで体を拭いてあげるだけでも、抜け毛や汚れをある程度取り除くことができます。
注意したい皮毛の栄養不足

美しく健康な被毛を維持するためには、外側からのケアだけでなく、内側からのケア、つまり栄養バランスの取れた食事が不可欠です。
特に、抜け毛の多いアメリカンショートヘアの皮毛の栄養不足には注意が必要です。
被毛の主成分は「タンパク質」です。
質の良いタンパク質が不足すると、毛がパサついたり、弱くなって抜けやすくなったりします。
また、皮膚や被毛の健康をサポートする栄養素も重要です。
被毛の健康に重要な栄養素
- タンパク質: 被毛の主成分。良質な動物性タンパク質が必要です。
- 必須脂肪酸(オメガ3・オメガ6): 皮膚の潤いを保ち、毛艶を良くする働きがあります。
- ビタミン類(特にビタミンA、E、B群): 皮膚の新陳代謝を助け、健康を維持します。
- ミネラル類(亜鉛、銅など): 被毛の色素形成や健康維持に関与します。
普段与えているキャットフードが、これらの栄養素をバランス良く含んだ総合栄養食であるかを確認しましょう。
特に換毛期には、毛の再生に多くの栄養が使われるため、普段よりも栄養価の高い食事を意識するのも良いでしょう。
毛玉ケアフードも選択肢の一つ
抜け毛を飲み込んでしまうことが多い場合は、食物繊維が豊富に含まれた「毛玉ケア」用のフードもおすすめです。
食物繊維が、飲み込んだ毛を便と一緒に排出しやすくするのを助けてくれます。