
まん丸な顔立ちと、ずんぐりとしたフォルムが愛らしいブリティッシュショートヘア。
その魅力的な姿を毎日眺める中で、ふと「うちの子のしっぽ、なぜしましま模様なんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。
この現象は、ブリティッシュショートヘアの飼い主さんの間でよく話題になります。
子猫の時にだけ見られる不思議な縞模様は、通称ゴーストタビーと呼ばれ、しましまは成長の証とも言われています。
しかし、中には大人になってもゴーストタビーが消えない個体もいて、その理由は一筋縄ではいきません。
この縞模様は、正式な柄であるクラシックタビーとは何が違うのでしょうか。
また、美しいブルーやクリームといった様々な毛色と、しましま模様にはどのような関係があるのでしょう。
この記事では、多くの飼い主さんが抱くブリティッシュショートヘアのしっぽのしましまに関する疑問を、専門的な観点から分かりやすく解き明かしていきます。
ブリティッシュショートヘアのしっぽがしましまな謎
- なぜしましま模様が現れるのか?
- 子猫期に見られるゴーストタビーとは
- しましまは成長の証といわれる理由
- 大人になってもゴーストタビーが消えない場合
- 様々な毛色としま模様の関係性
- 正式な縞模様のクラシックタビー
なぜしましま模様が現れるのか?

ブリティッシュショートヘアのしっぽや体にしましま模様が現れるのは、一見すると不思議に思えますが、その背景には猫が進化の過程で受け継いできた、奥深い遺伝子の仕組みが関係しています。
結論から言うと、この現象は全ての猫が生まれながらに持っている「縞模様の設計図」が、特定の条件下で表面に姿を現すために起こるのです。
まず、全ての猫の遺伝情報の中には、縞模様を作り出す「タビー遺伝子」が必ず存在します。
これは言わば、体にどのような模様を描くかという基本的な設計図のようなものです。
しかし、この設計図が実際に表面に現れるかどうかは、「アグーチ遺伝子」という、いわば「模様のオン・オフを切り替えるスイッチ」の役割を持つ別の遺伝子によってコントロールされています。
模様が現れる「アグーチ(ON)」の状態
アグーチ遺伝子が優性(A)として働く場合、このスイッチは「ON」になります。
スイッチがONになると、一本一本の毛に色素の濃い部分と薄い部分が交互に現れるよう指示が出されます。
この色の帯が、被毛全体でコントラストを生み出し、私たちが普段目にするはっきりとした縞模様、つまり「タビー柄」として現れるのです。
模様が隠れる「ノンアグーチ(OFF)」の状態
一方で、ブリティッシュショートヘアの代表的な毛色であるブルーのような単色(ソリッドカラー)の猫は、アグーチ遺伝子が劣性(aa)として働いています。
この状態は、スイッチが「OFF」になっていると考えると分かりやすいでしょう。
スイッチがOFFのため、毛の色を交互に変える指示は出されず、根元から毛先まで一種類の色素だけで毛が作られます。
この結果、体は単色に見えます。
この状態を「ノンアグーチ」と呼びます。
スイッチがOFFなのに模様が見える理由
ここで、「スイッチがOFFなのに、なぜしま模様が見えるのか?」という疑問が生じます。
その答えは、子猫の被毛の未熟さにあります。
ノンアグーチのスイッチは、成猫では強力に模様を抑制しますが、子猫の時期はその抑制力がまだ完全ではありません。
さらに、子猫の被毛は成猫に比べて細く、密度もまばらです。
特に、体を保温する役割を持つ下毛(アンダーコート)が未発達なため、皮膚に近い部分の、本来隠れているはずのタビー遺伝子の影響が、抑制しきれずにうっすらと透けて見えてしまうのです。
これが、単色の子猫にしましま模様(ゴーストタビー)が現れる根本的な理由となります。
このように、愛猫に見られるしましま模様は、決して珍しいことや異常なことではありません。
むしろ、猫が祖先から受け継いできた遺伝的な名残が、子猫という特別な時期にだけ垣間見える、とても自然で魅力的な現象と言えるでしょう。
子猫期に見られるゴーストタビーとは

子猫の時期にだけ、その体にうっすらと浮かび上がるしましま模様は、その儚く神秘的な性質から「ゴーストタビー」または「ゴーストマーキング」という名前で呼ばれています。
これは、成長するにつれて消えていくことが多い、まるで幽霊(ゴースト)のような一過性の模様であることを意味します。
この現象は、ブリティッシュショートヘア特有のものではなく、他の多くの猫種でも見られるごく自然な特徴です。
具体的には、このゴーストタビーは、前述のノンアグーチ(単色)の遺伝子を持つ猫、特にブルー、ブラック、チョコレートといった色の濃いソリッドカラーの子猫で顕著に観察されます。
では、なぜ本来は単色のはずの猫に、このような模様が一時的に現れるのでしょうか。
未熟な被毛構造が模様を浮かび上がらせる
最大の理由は、子猫の被毛がまだ成猫のそれとは全く異なる、未熟な状態にあるためです。
成猫のブリティッシュショートヘアの被毛は、体を保護する硬めの上毛(オーバーコート)と、体温を保つための柔らかく密集した下毛(アンダーコート)から成る「ダブルコート」です。
この二層構造が、まるで高級な絨毯のように密に生えそろうことで、本来の美しい単色が形成されます。
しかし、生後数ヶ月の子猫の被毛は、まだこのダブルコートが完成しておらず、「キトンファズ」と呼ばれる、柔らかくふわふわとした産毛のような状態にあります。
特にアンダーコートがほとんど生えそろっていないため、被毛全体の密度が非常に低くなります。
このため、遺伝子レベルで持っている隠れたタビーの設計図が、未熟な被毛を通して透けて見えてしまうのです。
ゴーストタビーが現れやすい体の部位
ゴーストタビーは、体のどの部分にでも現れる可能性がありますが、特に観察されやすい部位がいくつかあります。
- しっぽ(尾): 最も一般的に見られる部位で、リング状の模様が現れることが多いです。
- 四肢(足): 足にも、しましまの模様がはっきりと出ることがあります。
- 額: タビー柄の特徴である「M」字の模様が、うっすらと額に浮かび上がる子もいます。
これらの模様は、子猫が持つ本来のタビーパターンの名残であり、自然光の下など、特定の光の条件下でより一層はっきりと見ることができます。
愛猫を観察する際は、ぜひ窓際などの明るい場所で、しっぽや足、おでこに注目してみてください。
この時期限定の可愛らしいゴーストタビーは、子猫ならではの特別なチャームポイントです。
その儚さゆえに、多くの飼い主を魅了し、子猫時代の忘れられない思い出の一つとなるでしょう。
しましまは成長の証といわれる理由

子猫のしましま模様が「成長の証」といわれるのは、その多くが成猫になる過程で消えていく、あるいは見えにくくなるためです。
これは、猫の被毛が成長とともに変化することに起因します。
ブリティッシュショートヘアは、成猫になるまで3年から5年ほどかかるといわれる、非常に成長がゆっくりな猫種です。
この長い期間をかけて、体格だけでなく被毛も成熟していきます。
被毛の成熟による変化
子猫の柔らかく細い毛は、成長するにつれて太く、しっかりとした毛質に変わります。
特に、体を保護する役割を持つオーバーコートが発達し、毛の密度が高くなります。
この密集した被毛が、本来のソリッドカラーをはっきりと表現するようになり、結果として、下層に隠れていたゴーストタビーが見えなくなるのです。
そのため、子猫の時に見られたしましま模様が薄くなったり、完全に見えなくなったりするのは、被毛が順調に成長し、成猫の美しいコートへと変化している証拠と考えられます。
日々のお手入れの中で、愛猫のしま模様の変化を観察することは、その成長を実感できる貴重な機会となるでしょう。
大人になってもゴーストタビーが消えない場合

多くのゴーストタビーは成長と共に消えていきますが、中には成猫になってもしましま模様が残る個体もいます。
これは、決して異常なことではありません。
ゴーストタビーが消えない、あるいは逆に濃くなる理由はいくつか考えられます。
一つは、遺伝的な要因です。
タビー遺伝子の働きが比較的強く、ソリッドカラーを決定づける遺伝子の働きを上回る場合、模様が残りやすくなることがあります。
また、毛質や毛の密度も影響します。
ブリティッシュショートヘアの中でも、個体によって毛の密度や太さには若干の違いがあります。
比較的、毛の密度が低めであったり、毛質が柔らかかったりする個体では、成猫になっても模様が視認しやすい傾向が見られます。
さらに、光の当たり方によっても見え方が大きく変わります。
太陽光や照明の下では、毛の艶や角度によって、普段は見えないしま模様がくっきりと浮かび上がることがあります。
ある飼い主さんのSNS投稿では、特定の光の下で撮影した際に、体の色としっぽの色が全く違うように見える写真が話題になりましたが、これも光の反射による目の錯覚の一種と考えられます。
これらのことから、成猫になってもしま模様が残っているのは、その子の持つユニークな個性の一部と捉えるのが自然です。
様々な毛色としま模様の関係性

ブリティッシュショートヘアは、ブルー以外にもクリーム、ブラック、ホワイト、ライラックなど、非常に多彩な毛色が認められている猫種です。
そして、しましま模様の見え方は、これらの毛色によって大きく異なります。
一般的に、ゴーストタビーは色の濃いソリッドカラーでより視認しやすくなります。
例えば、ブルーやブラックの毛色では、地色と模様のわずかな色の差がコントラストを生み、しま模様として認識されやすいです。
一方で、クリームやライラックのような淡い色の場合は、模様との色の差が少ないため、ゴーストタビーはあまり目立たないか、ほとんど見えないことが多いです。
また、レッド系の毛色を持つ猫は、アグーチ遺伝子の働きに関わらず、タビー模様が現れやすいという遺伝的な特徴を持っています。
そのため、レッド系のブリティッシュショートヘアは、ソリッドであっても比較的はっきりとしたしま模様が見られる傾向にあります。
このように、愛猫の毛色がしま模様の見え方にどう影響しているかを知ることで、その子の持つ毛色の特性への理解がより一層深まるでしょう。
正式な縞模様のクラシックタビー

ゴーストタビーが一時的、あるいは偶発的に見える模様であるのに対し、「クラシックタビー」は遺伝子によって定められた正式な縞模様の一つです。
ブリティッシュショートヘアにも、このクラシックタビーのパターンは認められています。
クラシックタビーの最大の特徴は、体の側面に現れる渦巻き模様です。
まるで大理石(マーブル)のようにも見える、幅の広い縞が特徴的で、肩のあたりには蝶(バタフライ)のような模様が見られます。
背中には数本の太いラインが走り、しっぽは太くはっきりとしたリング状の模様になります。
この模様は、ゴーストタビーとは異なり、成長しても消えることはありません。
むしろ、成長とともにより一層コントラストがはっきりして、美しい渦巻き模様が明確になります。
同じ「しましま」であっても、子猫の時にだけ見られることが多いゴーストタビーと、生涯にわたってその猫の個性となるクラシックタビーは、全く異なるものであると理解しておくことが大切です。
しましまなしっぽを持つブリティッシュショートヘアの魅力
- 成長過程での毛色の変化も楽しめる
- 個体差で変わるしっぽの模様パターン
- 光の加減で色の濃さが変わることも
- チェシャ猫のモデルもしましまだった?
- まとめ:奥深いブリティッシュショートヘアのしっぽのしましま
成長過程での毛色の変化も楽しめる

ブリティッシュショートヘアのしましま模様は、その成長過程における変化自体が大きな魅力の一つです。
子猫の時にしか見られないかもしれない儚いゴーストタビーは、その時期だけの特別な思い出となります。
「いつ消えてしまうのだろう?」と思いながら日々観察する時間は、飼い主にとってかけがえのないものです。
そして、しま模様が徐々に薄れていく様子は、愛猫が順調に成猫へとステップアップしている証であり、喜ばしい成長の記録と言えるでしょう。
逆に、成猫になっても模様が残る場合、それはその子だけのユニークなチャームポイントとなります。
「うちの子はしましまが残るタイプなんだ」という発見は、愛猫への理解をさらに深め、より一層の愛情を育むきっかけになります。
このように、しましま模様が消えても残っても、その変化の過程すべてが、ブリティッシュショートヘアとの生活を豊かに彩る魅力的な要素となるのです。
個体差で変わるしっぽの模様パターン

しましま模様の現れ方は、驚くほど個体差が豊かです。
しっぽだけにリング状の模様がはっきりと出る子もいれば、体全体にうっすらと模様が広がる子もいます。
また、模様の濃さや太さも、一匹一匹で全く異なります。
前述の通り、クラシックタビー以外にも、猫のタビー柄にはいくつかの種類が存在します。
タビーの種類 | 模様の特徴 |
クラシックタビー | 体の側面に渦巻き模様(マーブル模様)がある。幅の広い縞が特徴。 |
マッカレルタビー | 魚のサバ(Mackerel)に似た、細く平行な縞模様。最も一般的なタビー柄。 |
スポッテッドタビー | 縞模様が途切れ、ヒョウ柄のような斑点(スポット)になっている模様。 |
ティックドタビー | 一本一本の毛に色の濃淡があり、体全体がキラキラと輝いて見える。明確な縞模様はない。 |
ブリティッシュショートヘアのゴーストタビーや、正式なタビー柄の個体は、これらのパターンの影響を受けていると考えられます。
愛猫のしましまがどのパターンに近いのかを観察してみるのも面白いかもしれません。
この予測不可能な個体差こそが、それぞれの猫を世界に一匹だけの特別な存在にしているのです。
光の加減で色の濃さが変わることも

ブリティッシュショートヘアのしましま模様は、その時々の環境、特に光の加減によって、まるで魔法のように見え方が変化します。
愛猫のしましまが「昨日より濃く見える」「今はほとんど見えない」と感じるのは、決して気のせいではありません。
これは、彼らが持つ独特の被毛構造と、光の物理的な性質が織りなす、非常に興味深い現象なのです。
被毛の構造と光の複雑な反射
ブリティッシュショートヘアの被毛は、ただ色が乗っているだけの平面ではありません。
体を保護する太めの上毛(オーバーコート)と、保温性に優れた密度の高い下毛(アンダーコート)からなる、立体的な二重構造をしています。
光がこの複雑な構造の被毛に当たると、単純な反射ではなく、様々な現象が同時に起こります。
一部の光は、滑らかなオーバーコートの表面で直接反射し、被毛に美しい艶(シーン)を与えます。
また、一部の光は被毛の内部に浸透し、密集したアンダーコートの中で拡散・反射を繰り返します。
この内部での光の乱反射が、その猫本来の深い色合いを私たちの目に届けているのです。
しましま模様がある部分は、隣接する部分とわずかに色素の構成が異なります。
光が当たると、この色素の差によって光の吸収率や反射率が変わり、そのコントラストが強調されることで、隠れていた模様がくっきりと浮かび上がって見える、という仕組みです。
光源の種類と「色温度」がもたらす変化
見え方が変わる要因は、光の強さや角度だけではありません。光源の種類、つまり「色温度」も大きく影響します。
- 太陽光(自然光): 最も明るく、全ての波長の色を含むため、被毛の艶と陰影を最もドラマチックに引き出します。晴れた日の直射日光の下では、しま模様は最も鮮明に観察できるでしょう。
- 曇りの日の光: 光が雲によって拡散されるため、影が柔らかくなります。これにより、コントラストが弱まり、模様が目立たなくなることがあります。
- 室内の照明: 例えば、青みがかったクールな光の蛍光灯の下では、ブルーの毛色がより際立ちます。一方で、オレンジがかった暖かい光の白熱灯の下では、被毛に柔らかな深みが加わります。それぞれの照明が、模様の見え方に異なる効果を与えるのです。
体の動きと毛並みが作る陰影
猫のしなやかな動きも、しま模様の見え方を左右する重要な要素です。
しっぽをくるんと丸めたり、体を伸ばして背中を反らせたりする時、一部の毛は普段とは違う方向に逆立ちます。
毛が逆立った部分は、毛と毛の間に多くの影を捉え、光の当たり方も不規則になります。
この結果、その部分だけが周囲より色が濃く見え、隠れていたしま模様が突然姿を現すことがあります。
普段は滑らかな毛並みに隠されている模様が、ふとした瞬間のポーズによって「発見」されるのは、このためです。
このように、愛猫のしましま模様の見え方は、被毛の構造、光の種類、そして日々の何気ない動きという三つの要素が複雑に絡み合って常に変化しています。
様々な時間帯や場所で愛猫を観察することは、その時々でしか見られない、一期一会の美しい表情を発見する楽しみにつながるでしょう。
チェシャ猫のモデルもしましまだった?

ブリティッシュショートヘアにまつわる話の中で、特に夢とロマンを感じさせるのが、ルイス・キャロルの不朽の名作『不思議の国のアリス』に登場する、あの謎めいた「チェシャ猫」のモデルになったという説です。
物語の中で、ニヤニヤと特徴的な笑みを浮かべながら、自由に現れたり消えたりするチェシャ猫の姿は、多くの人の記憶に深く刻まれています。
この魅力的なキャラクターのモデルとして、なぜブリティッシュショートヘアが有力視されているのでしょうか。
その根拠は、いくつかの非常に説得力のある共通点に見出すことができます。
ジョン・テニエルの挿絵に描かれた「しま模様」
この説の最も直接的な証拠とされるのが、初版(1865年)から物語の挿絵を手がけたジョン・テニエルが描いたチェシャ猫の姿です。
彼の描いたチェシャ猫には、はっきりと体の側面に渦を巻くような「クラシックタビー」の縞模様が確認できます。
19世紀半ばのイギリスにおいて、ブリティッシュショートヘアは特定のブリーダーによって改良が進められる以前の、ありふれた家庭猫として広く親しまれていました。
その中には、こうしたタビー柄の個体も数多く含まれていたと考えられます。
そのため、テニエルが挿絵を描くにあたり、最も身近で象徴的なイギリスの猫として、しま模様のブリティッシュショートヘアを参考にした可能性は非常に高いと言えるでしょう。
「チェシャ猫の笑み」と特徴的な口元
しま模様以上に強力な根拠として挙げられるのが、その「表情」です。
ブリティッシュショートヘアは、丸い顔、ふっくらとした頬、そして豊かに盛り上がった口元のウィスカーパッド(髭袋)を持っています。
この独特の顔立ちが、まるで常に微笑んでいるかのような、穏やかで含みのある表情を生み出しています。
この生まれつきの「スマイル」は、まさしくチェシャ猫の代名詞である「ニヤニヤ笑い(grin)」のイメージと見事に重なります。
物語から抜け出してきたかのようなその口元は、この説に強い説得力を与えています。
神出鬼没な性質と「ゴーストタビー」の共通点
さらに、物語におけるチェシャ猫の性質と、ブリティッシュショートヘアのしましま模様の間には、詩的な共通点を見出すことができます。
チェシャ猫は、徐々に姿を消していき、最後にはその象徴的な笑みだけを残して消え去ります。
この不思議な消失現象は、前述の「ゴーストタビー」を彷彿とさせます。
子猫の時にだけ現れるゴーストタビーは、成長と共にゆっくりと薄れ、やがては見えなくなってしまう儚い模様です。
まるでチェシャ猫が消えていくように、ゴーストタビーもまた、その猫の成長の記憶の中に消えていくのです。
この神出鬼没な性質の一致は、単なる偶然以上の何かを感じさせます。
もちろん、作者のルイス・キャロル自身がモデルを明言したわけではないため、これはあくまで数ある説の一つです。
しかし、これだけの共通点が揃っていることから、ブリティッシュショートヘアがチェシャ猫のモデルであるという説は、多くの人々の心を捉えて離さないのです。
愛猫のしましまのしっぽを眺めながら、この不思議な物語の世界に思いを馳せるのは、ブリティッシュショートヘアと暮らす飼い主ならではの、特別な楽しみ方かもしれません。