
「不思議の国のアリス」のチェシャ猫のモデルともいわれ、穏やかな性格で人気のブリティッシュショートヘア。
その魅力の一つに「抜け毛が少ない」というイメージがありますが、実際に換毛期を迎えると、想像以上の抜け毛に驚いている飼い主さんも多いのではないでしょうか。
抜け毛が少ない猫種か?という疑問をはじめ、具体的な毛が抜ける時期はいつなのか、また、短く密集した特徴的な毛質に合わせたケアの方法も気になるところです。
さらに、ブラッシングを嫌いな子への対処法や、抜け毛対策に最適なブラシ おすすめ、換毛期に時折見られる毛割れや稀に起こる毛色 変化など、知りたいことはたくさんあるでしょう。
この記事では、ブリティッシュショートヘアの換毛期に関するあらゆる疑問を徹底的に掘り下げ、抜け毛の真相から具体的なケア方法まで、愛猫と飼い主さんが快適に過ごすための全ての情報を詳しく解説します。
ブリティッシュショートヘアの換毛期と抜け毛の事実
- 抜け毛が少ない猫種か?という通説の真相
- 抜け毛の量を左右するダブルコートの毛質
- 具体的に毛が抜ける時期はいつからいつまで?
- 換毛期に見られる地肌の毛割れ
- 換毛期に起こる毛色の変化の可能性
抜け毛が少ない猫種か?という通説の真相

まず最初に結論から申し上げますと、「ブリティッシュショートヘアは抜け毛が少ない」という通説は、これからお迎えを検討している方にとって大きな誤解を招く可能性のある情報です。
実際には、日々の抜け毛対策が欠かせない猫種であると認識しておく必要があります。
もちろん、この通説が完全に間違いというわけではありません。
なぜなら、彼らの被毛は短いため、同じく毛が密集している長毛種の猫たちと比べれば、床に落ちた抜け毛一本一本が目立ちにくいのは事実でしょう。
しかし、これはあくまで「抜け毛が目立ちにくい」というだけの話であり、「抜け毛の量そのものが少ない」わけではないのです。
では、なぜこのような通説が広く浸透しているのでしょうか。
これにはいくつかの理由が考えられます。
「抜け毛が少ない」と言われるようになった背景
- 見た目の印象:短く、体に沿って生えている毛は、長毛種のようにフワフワと空中に舞いにくいため、抜け毛が少ないように感じられます。
- 情報の伝わり方:一部のメディアやブリーダーが「(他の長毛種と比べて)抜け毛のお手入れは比較的楽」と表現した情報が、いつしか「(絶対的に)抜け毛が少ない」と解釈され、広まっていった可能性が考えられます。
実際、ブリティッシュショートヘアと暮らす多くの飼い主さんからは、SNSやブログなどで「黒い服で抱っこしたら毛だらけになった」「撫でただけでごっそり毛が抜ける」「掃除機がけは毎日の日課」といった声がごく当たり前に聞かれます。
言ってしまえば、抜け毛の量そのものは、他の多くの猫種と同等か、毛の密度を考慮するとそれ以上に多いと感じる場面も決して珍しくありません。
「お手入れが楽」というイメージに注意
ブリティッシュショートヘアをお迎えする上で、「抜け毛が少ないからお手入れが簡単そうだ」というイメージだけで判断するのは避けるべきです。
抜け毛は彼らの健康的な生態の一部であり、避けては通れません。
この事実をあらかじめ理解し、日々のブラッシングや掃除といったケアを楽しみながら行う心構えを持つことが、猫と飼い主の双方にとって幸せな暮らしを送るための重要な第一歩となるでしょう。
抜け毛の量を左右するダブルコートの毛質

前述の通り、ブリティッシュショートヘアの抜け毛は決して少なくありません。
では、なぜこれほど多くの毛が抜けるのでしょうか。
その最大の理由は、彼らが持つ「ダブルコート」と呼ばれる、非常に高機能で特殊な二層構造の被毛にあります。
これは、ただ単に毛が二重になっているという単純な話ではなく、それぞれに全く異なる役割を持った2種類の毛で構成されているのです。
人間の服装に例えると、非常に分かりやすいかもしれません。
被毛の構造を人間の服装に例えると…
- オーバーコート(上毛):いわば「防水・防風機能のある丈夫なレインコート」です。少し硬めでしっかりとした毛が外側に生えており、雨や直射日光、外部の汚れなどからデリケートな皮膚を物理的に守る役割を担います。
- アンダーコート(下毛):こちらは「保温性抜群の、ふわふわなダウンジャケット」に相当します。皮膚に一番近い内側に、綿毛のように細く柔らかい毛がびっしりと密集して生えており、体温を外に逃がさないための断熱材として機能しています。
私たちがブリティッシュショートヘアを撫でた時に感じる、あのビロードや厚手の絨毯のような、弾力のある独特の触り心地は、まさにこの密集したアンダーコートによるものなのです。
そして、換毛期に問題となる大量の抜け毛は、主にこの内側の「ダウンジャケット」、つまりアンダーコートです。
ブリティッシュショートヘアの祖先は、湿気が多く寒いイギリスの気候を生き抜くために、この保温性の高いアンダーコートを非常に発達させてきました。
そのため、季節の変わり目に気温が大きく変動すると、体温を適切に保つためにこのアンダーコートをごっそりと脱ぎ着(=生え変わり)させる必要があり、これが大量の抜け毛となって現れるわけです。
シングルコートの猫種との違い
ちなみに、猫の中にはアンダーコートがほとんどなく、オーバーコートだけで構成された「シングルコート」の猫種もいます。
代表的な例ではシャムやベンガル、シンガプーラなどが挙げられ、これらの猫種はダブルコートの猫に比べて、換毛期の抜け毛が少ない傾向にあります。
このように考えると、ブリティッシュショートヘアの抜け毛が多いのは、彼らが厳しい環境に適応し、健康に生き抜いてきた歴史の証とも言えるでしょう。
ただ、この健康の証である抜け毛も、放置すれば猫自身が毛づくろいの際に飲み込み、お腹に毛玉が溜まる「毛球症」の原因にもなり得ます。
だからこそ、飼い主による適切なケアが重要になるのです。
具体的に毛が抜ける時期はいつからいつまで?

ブリティッシュショートヘアの換毛期は、主に年に2回、春と秋に訪れます。
春の換毛期(3月~5月頃)
冬の寒さを乗り切るための保温性の高い冬毛(アンダーコート)が抜け、夏に向けて通気性の良い夏毛に生え変わる時期です。
1年の中で最も抜け毛が多くなるのがこの時期で、ブラッシングをすると驚くほどの量の毛が取れます。
秋の換毛期(9月~10月頃)
夏用の通気性の良い毛が抜け、冬の寒さに備えるための保温性の高い、密集した冬毛に生え変わる時期です。
春ほどではありませんが、この時期も抜け毛は多くなります。
完全室内飼いの猫の換毛期
近年は、エアコンの普及により一年中快適な室温で過ごす完全室内飼いの猫が増えています。
このような環境では、季節の変化を感じにくくなるため、明確な換毛期がなく一年中少しずつ毛が抜け続ける傾向があります。
また、換毛期のタイミングが一般的な時期からずれることも少なくありません。
換毛期に見られる地肌の毛割れ

換毛期にブラッシングをすると、大量のアンダーコートが抜けるため、一時的に毛の密度が低くなり、毛がぱっくりと割れて地肌が見えてしまうことがあります。
これを「毛割れ」と呼びます。
特にブラッシング後や、猫が体を動かした際に背中線やお尻のあたりで地肌が見えると、病気ではないかと心配になるかもしれません。
しかし、これは一時的なもので、新しい毛が生えそろってくれば自然と元に戻ります。
皮膚病との見分け方
単なる毛割れであれば心配はいりません。
ただし、以下のような症状が見られる場合は、皮膚病やアレルギーの可能性も考えられます。
様子がおかしいと感じたら、すぐに動物病院を受診してください。
- 地肌が赤い、または炎症を起こしている
- フケが大量に出ている
- 猫自身がしきりに痒がっている
- 脱毛部分が円形など特定の形をしている
換毛期に起こる毛色の変化の可能性

換毛期に起こる興味深い現象の一つとして、ごく稀にですが、愛猫の毛色が以前とわずかに変化したように感じられることがあります。
「あれ、なんだか最近、毛の色が薄くなった?」「前より深みが出たような…」といった小さな気づきです。
結論から言うと、これは多くの場合、病気や異常ではなく、季節の移り変わりに伴う自然な生理現象の一つと考えられています。
特に心配する必要はありません。
では、なぜこのような変化が起こるのでしょうか。
これは、新しく生え変わる夏毛と冬毛で、毛の色を決定する「メラニン色素」の生成量やバランスが、微妙に異なるために起こると考えられています。
その主な要因として、日照時間や気温の変化が影響しているという説があります。
季節による毛色の変化パターン(一例)
- 夏毛:日照時間が長く、日光を浴びる機会が増えるため、メラニン色素が影響を受け、全体的に少し明るい色合いや、やや赤みがかった(茶色がかった)色合いの毛が生えてくることがあります。
- 冬毛:日照時間が短くなるため、より濃く、光沢のある深い色合いの毛が生えてくる傾向が見られます。
この変化は、ブリティッシュショートヘアの代表的な毛色である「ブルー」で、夏はやや明るく、冬はスモーキーで深みのある色合いに感じられたり、「クリーム」の毛色がより白っぽく見えたり、逆に濃い色になったり、といった形で見られます。
また、「タビー(縞模様)」のある子の場合は、縞模様のコントラストが季節によって微妙に変わることもあるようです。
注意すべき「病的な毛色変化」との違い
前述の通り、換毛に伴う毛色の変化は全体的に均一で、あくまで「色合い」や「濃淡」のレベルです。
しかし、下記のような場合は栄養失調や皮膚病、あるいは他の病気のサインである可能性も否定できません。変化の様子をよく観察し、不安な場合は迷わず動物病院に相談しましょう。
- 特定の一部分だけが、まとまって白髪のように色が抜ける。
- 毛ヅヤが全くなくなり、パサパサの質感とともに色が薄くなる。
- 毛色の変化に加えて、皮膚の赤み、フケ、脱毛、かゆがる素振りなどが見られる。
もし愛猫の毛色変化が健康的な範囲のものであれば、それは季節ごとに違った表情を見せてくれる、その子だけの個性と言えます。
季節ごとに写真を撮りためて「夏毛カラー」と「冬毛カラー」のアルバムを作ってみるのも、素敵な思い出作りになりますよ。
ブリティッシュショートヘアの換毛期の正しいケア方法
- 抜け毛ケアに最適なブラシのおすすめは?
- ブラッシング 嫌いな猫への対処法
- 換毛期のシャンプーは必要か
- 部屋にたまる抜け毛の掃除方法
- 食事でサポートする抜け毛ケア
- 快適なブリティッシュショートヘアの換毛期を過ごすためにまとめ
抜け毛ケアに最適なブラシのおすすめは?

ブリティッシュショートヘアの密集した被毛を効果的にケアするためには、用途に応じたブラシの使い分けが重要です。
皮膚を傷つけず、しっかりと抜け毛を除去できるブラシを選びましょう。
ブラシの種類と特徴
主に以下の3種類のブラシを揃えておくと、あらゆるシーンに対応できます。
ブラシの種類 | 主な特徴 | おすすめの使用シーン |
---|---|---|
ラバーブラシ | ゴムやシリコン製で肌当たりが優しい。静電気で抜け毛を吸着する。マッサージ効果も期待できる。 | 毎日の基本的なブラッシングに最適。ブラッシングに慣れていない子猫や、肌が敏感な猫にもおすすめです。 |
獣毛ブラシ | 豚毛や猪毛でできたブラシ。被毛の表面のホコリを取り、油分を全体に行き渡らせて美しいツヤを出す。 | ブラッシングの仕上げに使用します。毛並みを整え、光沢のある美しい被毛を保つのに役立ちます。 |
アンダーコート用ブラシ (ファーミネーターなど) | 特殊な刃で、抜け毛の原因となるアンダーコートだけを効率的に除去する。 | 抜け毛が特に多い換毛期に週1回程度のスペシャルケアとして使用します。 |
アンダーコート用ブラシの使いすぎに注意!
ファーミネーターに代表されるアンダーコート用ブラシは、驚くほど抜け毛が取れるためつい夢中になってしまいがちです。
しかし、やりすぎると健康な毛まで抜いてしまったり、皮膚を傷つけたりする原因になります。
必ず使用頻度と時間を守り、優しく梳かすように使いましょう。
ブラッシング 嫌いな猫への対処法

ブリティッシュショートヘアは、自立心が高く、過度なスキンシップを好まない性格の子も少なくありません。
「ブラッシングをしようとすると逃げてしまう」「唸って嫌がる」と悩んでいる飼い主さんも多いでしょう。
大切なのは、無理強いをせず、ブラッシングを「気持ちいいこと」「楽しいこと」だと学習してもらうことです。
以下のステップで少しずつ慣らしていきましょう。
猫ちゃんにとって、ブラッシングが嫌な時間になってしまっては意味がありません。
まずは猫ちゃんの気持ちを最優先に、根気強く向き合ってあげることが一番の近道ですよ。
- リラックスタイムを狙う
膝の上でくつろいでいる時や、撫でられてゴロゴロ言っている時など、猫がリラックスしているタイミングで始めましょう。 - まずは手で撫でる(ハンドブラッシング)
いきなりブラシを使わず、まずは飼い主さんの手で優しく撫でてあげます。少し手を湿らせて撫でるだけでも、表面の抜け毛は取ることができます。 - 短時間から始める
猫が嫌がる素振りを見せる前に、ごく短時間(1分〜3分程度)で終わらせるのがコツです。「もっとやってほしい」と思わせるくらいが理想です。 - ご褒美で良い印象を
ブラッシングが終わったら、大好きなおやつをあげたり、おもちゃで遊んであげたりして、「ブラッシングの後には良いことがある」と関連付けてもらいましょう。 - 道具に慣れさせる
ブラシを猫の見える場所に常に置いておき、匂いを嗅いだり触ったりして、ブラシそのものへの警戒心を解いてあげるのも効果的です。
換毛期のシャンプーは必要か

「ブラッシングだけでは抜け毛が追いつかない」「部屋中が毛だらけ…」そんな換毛期特有の悩みを抱える中で、「シャンプーで一気に洗い流せないか?」と考える飼い主さんは少なくないでしょう。
猫は本来、丁寧な毛づくろい(グルーミング)で自身の体を清潔に保つ動物のため、シャンプーは基本的に必須ではありません。
しかし、換毛期においては、シャンプーが抜け毛対策として非常に有効な選択肢の一つになり得ます。
ただし、その判断は愛猫の性格や体調を考慮し、慎重に行う必要があります。
まずは、換毛期におけるシャンプーのメリットと、猫にとってのデメリットを正しく理解しておきましょう。
換毛期にシャンプーをする強力なメリット
- 抜け毛をごっそり除去:ブラッシングでは取りきれない、皮膚の近くに浮き上がった無数のアンダーコートを一度に洗い流せます。これにより、その後の数日間の抜け毛が劇的に減る効果が期待できます。
- 毛球症リスクの低減:一度に大量の抜け毛を除去できるため、猫が日々のグルーミングで飲み込んでしまう毛の総量を効果的に減らせます。これは、お腹に毛玉が溜まる「毛球症」の予防に直結します。
- アレルゲンの洗浄:猫アレルギーの原因となるアレルゲン「Fel d 1」は、主に猫の唾液や皮脂腺から分泌され、毛づくろいによって毛やフケに付着します。シャンプーでこれらを洗い流すことは、アレルギーを持つご家族にとっても有効な対策となります。
見過ごせないデメリットとリスク
- 猫への多大なストレス:多くの猫にとって、水に濡れることは体温を奪われ、自由を制限される非常事態です。これが大きな精神的ストレスとなり、シャンプー嫌いが定着したり、体調を崩したりする原因にもなります。
- 皮膚トラブルの危険性:シャンプー剤のすすぎ残しや、ドライヤーでの乾かし方が不十分な場合、残った水分で雑菌が繁殖し、かえって皮膚炎やカビの原因になるリスクが伴います。
【判断基準】シャンプーすべきかはケースバイケース
これらのメリット・デメリットを踏まえた上で、シャンプーを行うべきか否かは、ご家庭の状況や愛猫の個体差によって変わってきます。
アレルギーを持つご家族がいる、愛猫が皮脂でベタつきやすい体質である、といった場合はシャンプーの推奨度は高まります。
一方で、水を極端に怖がる子や、高齢・持病で体力に不安がある子に無理強いするのは避けるべきです。
シャンプーを実践する際の手順と注意点
もしシャンプーを行うと決めた場合は、猫の負担を最小限に抑えるため、正しい手順で手早く行いましょう。
- シャンプー前のブラッシング:まず、シャンプー前に必ずブラッシングを行い、毛の絡まりをほぐし、ある程度の抜け毛と汚れを取り除いておきます。
- ぬるま湯で濡らす:35~38℃程度のぬるま湯を用意します。シャワーヘッドを体に密着させるように使い、お尻や足からゆっくりと濡らし始め、顔周りは避けるようにします。
- 泡立ててから優しく洗う:猫用の低刺激シャンプーを直接体につけるのではなく、手やスポンジでよく泡立ててから、マッサージするように優しく洗います。
- 徹底的にすすぐ:シャンプー剤のすすぎ残しは皮膚トラブルの元です。「もう十分」と思ってから、さらに念入りに、毛の根元からしっかりと洗い流してください。
- タオルドライと乾燥:吸水性の高いタオルで、ゴシゴシこすらずに優しく押さえるように水分を取ります。その後、ペット用のドライヤーを使い、皮膚から30cm以上離して、同じ場所に風が当たり続けないよう注意しながら、根本まで完全に乾かします。
シャンプーがどうしても難しい場合は、温かい蒸しタオルで全身を丁寧に拭いてあげるだけでも、かなりの抜け毛や汚れを除去できます。
愛猫の性格や体調を最優先に、最適なケア方法を選んであげてくださいね。
頻度としては、多くても換毛期の間に1回程度で十分です。
飼い主さんにとっても大仕事になりますが、抜け毛対策としては非常に効果的な手段の一つとして、検討してみる価値はあるでしょう。
部屋にたまる抜け毛の掃除方法

どれだけ熱心にブラッシングをしても、換毛期の抜け毛をゼロにすることはできません。
愛猫と飼い主さんの健康のためにも、部屋に落ちた抜け毛はこまめに取り除きましょう。
こまめな掃除機がけ
抜け毛対策の基本は、やはり掃除機です。特に換毛期は、できれば毎日かけるのが理想です。
舞い上がりを防ぐため、掃除機をかける前に霧吹きなどで床を軽く湿らせておくのも良いでしょう。
カーペットや布製品には粘着クリーナー
ソファやベッド、カーテン、洋服などに付着した毛は、粘着式のクリーナー(コロコロ)が手軽で効果的です。
ブリティッシュショートヘアの毛は短く硬めなので、布製品の繊維に刺さるように絡みつきます。
ゴム製のブラシなども、静電気で毛を集めてくれるのでおすすめです。
空気清浄機の活用もおすすめ
空気清浄機を設置すると、床に落ちる前に空中に舞っている抜け毛を効率的にキャッチしてくれます。
アレルギー対策になるのはもちろん、気になる猫のニオイを脱臭してくれるモデルもあり、室内の空気を快適に保つ上で非常に役立ちます。
食事でサポートする抜け毛ケア

ここまでご紹介してきたブラッシングやシャンプー、お部屋の掃除は、主に「今抜けている毛」への対処法です。
しかし、もっと根本的なアプローチとして、「これから生えてくる毛を、いかに健康で抜けにくく育てるか」という視点を持つことが非常に重要になります。
その鍵を握るのが、日々の食事、すなわち内側からのケアです。
猫の美しい被毛や丈夫な皮膚は、彼らが口にするものから作られています。
特に、被毛の主成分は「ケラチン」というタンパク質で構成されているため、食事の質が直接的に毛ヅヤや毛の強さに影響を及ぼすのです。
研究報告によっては、猫が食事から摂取したタンパク質の約25%〜30%もの量が、皮膚と被毛の健康を維持するために使われるとされています。
このため、良質なタンパク質が食事内容に不足していると、毛ヅヤが悪くなる、毛が細く切れやすくなる、ひいては過剰な抜け毛といったトラブルに繋がってしまうことがあります。
被毛の健康を支える重要栄養素
健康な被毛を育むためには、タンパク質はもちろんのこと、他の栄養素もバランス良く摂取することが不可欠です。
特に以下の栄養素は、皮膚と被毛の健康に深く関わっていると言われています。
栄養素 | 期待される主な働き | 多く含まれる食材・成分の例 |
---|---|---|
良質な動物性タンパク質 | 被毛の主成分「ケラチン」の材料となり、丈夫な毛を育む。 | チキン、ターキー、サーモン、卵など |
必須脂肪酸(オメガ3 & 6) | 皮膚のバリア機能をサポートし、潤いを保つ。炎症を抑え、美しい毛ヅヤを維持する助けとなる。 | サーモンオイル、亜麻仁油、鶏脂など |
ビタミン類(A, E, B群など) | 皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を正常に保ち、健康な皮膚環境を維持する。 | レバー、緑黄色野菜、卵など |
ミネラル類(亜鉛, 銅など) | 健康な皮膚細胞や毛の生成を助ける。毛の色素形成にも関与する。 | 肉類、魚介類、豆類など |
【実践】フードパッケージの裏側をチェックしよう
では、具体的にどのようなフードを選べば良いのでしょうか。
最も分かりやすい判断基準は、フードパッケージの「原材料」表示を確認することです。
良いフード選びのチェックポイント
原材料表示は、含まれている量が多いものから順番に記載されています。
最初の数項目をチェックするだけで、そのフードの品質をある程度推測することができます。
- 主原料(一番最初)の確認:原材料表示の一番最初に、「チキン」「サーモン」「ラム」といった具体的な肉や魚の名称が記載されているものを選びましょう。これは、良質な動物性タンパク質が最も多く含まれている証です。
- 注意したい表記:一番最初に「とうもろこし」「小麦」などの穀物が記載されているフードは、猫が消化を苦手とする植物性タンパク質が主体である可能性があります。また、「ミートミール」「家禽ミール」といった表記は、何の肉が使われているか品質が不明瞭な場合があるため、できれば具体的な肉・魚名が記載されたフードの方が安心です。
見落としがちな「水分補給」の重要性
栄養バランスの取れた食事と同様に、十分な水分摂取も皮膚と被毛の健康には欠かせません。
水分が不足すると皮膚が乾燥し、フケやかゆみ、脱毛の原因となることがあります。
ドライフードを主食にしている場合は特に、新鮮な水をいつでも飲めるように複数の場所に水飲み場を設置したり、食事の一部にウェットフードを取り入れたりする工夫も、有効な抜け毛ケアの一つと言えるでしょう。
このように、日々の食事が数ヶ月後の愛猫の被毛の状態を左右します。長期的な視点を持ち、愛猫の体を内側からサポートしてあげることで、換毛期の抜け毛トラブルを根本から軽減していくことが期待できるのです。
快適なブリティッシュショートヘアの換毛期を過ごすために
- 「抜け毛が少ない」は誤解を招く表現で実際は多い
- 抜け毛の主な原因は保温性の高いダブルコートの毛質
- 主な換毛期は春(3~5月)と秋(9~10月)の年2回
- 室内飼いの場合は換毛期の時期がずれることや通年抜けることもある
- 一時的に地肌が見える「毛割れ」は自然な現象
- ただし皮膚に赤みやかゆみがあれば動物病院へ
- 稀に換毛で毛色がわずかに変化することもある
- 抜け毛対策の基本は毎日のブラッシング
- 日常ケアにはラバーブラシ、仕上げに獣毛ブラシがおすすめ
- 換毛期にはアンダーコート用ブラシを週1回程度の追加ケアとして
- ブラシの使いすぎは皮膚を傷つけるため厳禁
- ブラッシングを嫌がる子にはリラックス時に短時間から慣らす
- 換毛期のシャンプーは抜け毛除去に有効だが必須ではない
- 部屋の抜け毛はこまめな掃除と空気清浄機で対策する
- 良質なタンパク質中心の食事が健康な被毛の土台となる